体重を増やしたい! 高校生 水球選手の質問

【質問】今、水球をやっている高校3年生ですが、指導者から「体重を増やそう」と言われているのですが、思うように増えません。部活終わりに補食を食べたり可能な限り努力しているのですが、体重を増やすには、どんなことを心がけたら良いでしょうか(試合に向けての練習期)?
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【解説】水球やアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)など水の中で行われる競技は、水の浮力があるため、ある程度体重があることが有利に働きます。また、水に浮くためには体脂肪も必要であり、伸び盛りの成長期が安定してきた時期などは体重増加がゆるやかになります。また、練習がきつく疲労が重なった時などは食欲も低下して、なおさら体重増加が厳しくなってきます。
体重が増えない、減りやすい選手の多くは、「食事の選び方が分からず、十分な摂取エネルギーが摂れてない」、また、「もともと、食が細くたくさんの量を食べることができない」(胃腸があまり強くない)選手が多いという報告があります。
ここでは管理栄養士(公認スポーツ栄養士)の皆様や国立スポーツ科学センター(JISS)の資料を参考に考えていくことにしましょう。
💝基本はバランスのとれた食事を摂ること
①主食(身体を動かすエネルギー源の主役;炭水化物・・・米、パン、うどん等)、②主菜(筋肉・骨・血液等、身体をつくる主役;タンパク質・・・肉、魚、卵、豆腐等)、③副菜(体調を整えたり、骨や血液の材料となる調整役;ビタミン・ミネラル・・・野菜、じゃがいも、キノコ類等)、④牛乳・乳製品(骨をつくったり、筋肉の働きの調整役;カルシウム、タンパク質・・・牛乳、チーズ、ヨーグルト)、⑤果物(疲労回復、コンディショニングで働き者;ビタミンC、炭水化物・・・果物全般)、これらを総合的にバランス良く食事で摂ることが大切です。
脂質も大切なエネルギーで細胞膜を作るときの大事な栄養素の一つですが、副菜等を摂取する中でとれてきます。お肉などタンパク質にも脂質が多く含まれています。
でも~、毎日の食事づくりは考えるだけでたいへ~ん!というお母さん方には、国立スポーツ科学センターの「アスリートの、私のお気に入りメニュー」や、アスレシピなどをご参考にしていただけるとメニューが考えやすいかもしれません。
💝体重を増量したい時の6つのポイント
・体重の増減がうまくいかない場合は、練習による消費量と、食事による供給量がバランスがとれていないことが考えれます。
・短期間で体重コントロールの結果を出そうとして極端な食事方法に変更するのはあまりオススメしません。筋トレも短期間で効果が出ないのと同様、食事も短期間では害こそあれ得策とは言えません。
・悪い例を言いますと、脂肪の多い高カロリーのものを食べ続けたり、一日、2回・3回とプロテインパウダーを摂ると言ったパターンに陥りやすくなります。このような食事は急激な体重や体脂肪の増加に繋がり、コンディショニング維持に悪影響を及ぼします。
・若いうちはまだ大丈夫ですが、内臓脂肪の増加や肝機能低下や、血糖値の上昇などを引き起こしやすく、健康面での心配も出てきます。
増量が必要なアスリートの無理のない増量ペース
・1ヶ月に体重の2~3%の増加率(80kgであれば1.6kg~2.4kg)
※大学生、社会人向けの基準であるので、もう少し緩やかでもいいかもしれません。
チェック1;朝食は必ず糖質とタンパク質もセットで摂る
朝の起き抜けは、寝ている間に体内のタンパク質分解が高まっています。朝食は必ず、パン+ハムエッグ、ご飯+納豆・目玉焼き・焼き魚など、エネルギー源の糖質、筋肉をつくるタンパク質セットで摂りましょう。
チェック2;補食は時間を決めて1日2~3回摂る
毎日、時間を決めて(少し流動的でも問題なし)、牛乳+バナナ、しゃけおにぎり、炭火焼き鳥おにぎりなど、糖質とタンパク質を一緒に摂りましょう。プロテインバーもオススメということです。
チェック3;昼食はおかずがしっかり摂れるものを
そばや冷やし中華など麺類一品で済ます、食の細い選手もみかけます。一食でもタンパク質が不足すると、体内でのタンパク質合成がうまくゆかなくなります(体重減少の要因)。麺類を選ぶ場合は、別途、サラダチキンやチーズ、冷や奴やヨーグルト、パスタを選択するならツナ缶などをたっぷり入れてタンパク質をしっかり摂りましょう。
チェック4;午後の練習後は即、糖質+タンパク質を摂る
練習・トレーニング後は、なるべく早めに、筋タンパク質の合成を高めるタンパク質と、筋グルコーゲンの原料となる糖質を補給します。糖質はセリー飲料や、おにぎり、バナナ、タンパク質はプロテインパウダー(あえて牛乳でつくる)やプロテインバーが摂りやすいでしょう。
チェック5;夕食は低脂肪、高タンパク質、ご飯はトレーニング量に合わせてしっかりと!
一日のうちでゆっくり、がっつり食べることが出来る夕食。主菜は、鶏胸肉のソテーや焼き魚、刺身など良質のタンパク質を摂りましょう。低脂肪・高タンパク食を心がけ、揚げ物や油でソテーしたおかずは控えましょう。とは言っても、揚げ物ってアスリートお母さんの味方でもありますので、絶対にダメなどとは言いませんので、心がけだけは頭に置いておいてください。ご飯はトレーニング量に合わせてがっつり食べてください。付け合わせや味噌汁、副菜でキノコ類、野菜や海草もたっぷり食べます。
チェック6;それでも体重が増えない選手は、就寝前に果物や牛乳を
以上、続けても体重増加がみられない場合は、寝る前にタンパク質や糖質の補給を行いましょう。牛乳、ヨーグルト、果物など、自身の胃腸に負担の少ない食物を選択しましょう。
💝補足:パンとご飯 どちらがオススメか!?
食パン | ご飯 | |
エネルギー | 260kcal | 168kcal |
タンパク質 | 9g | 2.5g |
脂質 | 4.2g | 0.3g |
炭水化物 | 46.6g | 37.1g |
食塩 | 1.2g | 0g |
炭水化物をみると、パンの方が手軽に摂れるではないかと思いがちですが、食後の血糖値の上がり方を示すGI値を比較すると食パンは95、ご飯は88となり、パンが高くなります。
タンパク質では、身体の中で合成できず、食物から吸収しなければならないアミノ酸を”必須アミノ酸”と言います。食品のタンパク質の栄養を評価する指標として「アミノ酸スコア」があります。高いほど必須アミノ酸の含有率が高く、身体の中で効率よく使われることになります。
小麦は42,白米は61となります。ちなみに肉、魚、卵は100です。
脂質をみると、パンは製造にバターを使用しているため高めになります。しかしパンの場合は、バターなどの脂分の多いものを塗ったり、挟んだりして食べることが多くなります。
私としては、高くはありますがGI値が低めで、どんなおかずにも合うお米(ご飯)を多くのおかずとともに食すことが体重増量に繋がると考えていますので、ご飯がオススメ!です。
※私見ではありますが、アスリートで激しい運動を行う若い選手や成長期の子どもには牛乳は栄養補助として、積極的に飲んでもいいのかなと思っていますが、その他の皆様にとっては特に必要ない食品であると思っております。また、チーズやバター、ヨーグルトなどの発酵食品は牛乳とは別ものであると捉えています。あくまでも私の考えです。
【回答】
上記を参考に、高校生終盤の大会を悔いなくプレーできるように、食事トレーニングを頑張ってみてください。
食はトレーニングの一環であり、短期では効果が難しいこと。地道に行う必要があることを念頭に日々実践してみてください。
時折、食べることが苦しくなることもあるかもしれません。身体(胃腸)に無理をかけてはいけませんが、そんな時は、自分が、チームが掲げている大きな目標を思い出し、自分がプールで活躍している姿を明確に思い浮かべて、今を過ごしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
参考にしてください 国立スポーツ科学センター HP