慢性前立腺炎(CP)の鍼灸治療 その1 ~慢性前立腺炎とは~
慢性前立腺炎、聞きなれない病名かもしれません。
当院へご来院され、薬物治療を継続しながら、鍼灸治療も行い、症状がかなり改善していった例をお話させていただきたいと思います(患者さんの承諾済みです)。
この患者さん、実は精子の運動率の改善も必要だったのです(妊活中)。そう、運動率もめでたく改善し、もうすぐパパになる予定でもあり、そのあたりも症状改善と関係があると思われますので、少しだけ触れさせていただきます(次回です)。
その前に、慢性前立腺炎について、どのような病気なのかみていきます。
●前立腺のある場所は上記の通りとなります。膀胱の出口で尿道の周りに巻きついています。ここが高齢になり肥大してくるのが前立腺肥大です。ということで男性特有の病気です。
●慢性前立腺炎は、若い世代に多い前立腺の病気です(特に30~40代)
●前立腺の中に炎症が生じた状態を言います。
●細菌が検出される細菌性慢性前立腺炎と、検出されない非細菌性があります(非細菌性の数が多い)。
●慢性炎症の場合は、熱もなく比較的症状が軽く気付かないこともあります。
●また炎症は認められませんが前立腺痛がある場合があり、これは「慢性骨盤疼痛症候群(CPPS)」として同様な治療がされるようです。
●原因がはっきりしない分かったような分からない病気でありますが、超音波検査にて前立腺結石がみつかる場合があり、これが原因と考えられる場合もあるようです。
●発症の要因と考えられているもの(環境要因と心身要因)
《環境要因》
①長時間のデスクワーク ②長時間の自転車(特にスポーツタイプ)やバイクでの移動、など前立腺を機械的に刺激する状態が発症要因と考えられています。
《心身要因》
①疲労 ②ストレス ③飲酒 ④冷え、など免疫力(抵抗力)の低下がリスクファクターと考えられています。
●症 状
《排尿症状》頻尿、残尿感、尿の勢いが弱い、排尿後に尿が漏れる、排尿痛、尿道の違和感
《腹部症状》下腹部・足の付け根・会陰部(肛門の前)の鈍痛や不快感
《その他の症状》睾丸の鈍痛や不快感、陰のうの痒み、下肢(特に大腿)の違和感やシビレ、勃起障害(ED)の原因になることもある
●検 査
・直腸診で前立腺に痛みがあれば、前立腺炎と診断。
・尿検査で白血球(炎症細胞)の有無を確認する。
・尿細菌培養検査で、細菌の有無を確認する。
・性行為経験者には尿中のクラミジア検査を行う(これによる発症も増加しているという)。
●治 療
・抗生物質、植物製剤(セルニルトン)、抗コリン剤、漢方薬(※)が使用される。
・2~4週が症状軽快の目安。
・数か月単位の治療が必要な場合があり、治癒と再燃を繰り返す場合もある。
そのような場合は根気よく治療を続ける必要がある。
・排尿困難を伴う場合、前立腺部・尿道の抵抗をとるためα1ブロッカーが使用される。
※漢方薬(病院や担当医師によって処方は違います)
・駆瘀血剤として、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散、桃核承気湯が処方。
・血虚の場合は、四物湯を処方。
・比較的元気がある(中間証・実証)場合は、小柴胡湯を処方。
・慢性疾患に対しては、八味地黄丸が処方。
・尿道炎症性疾患には、猪苓湯を処方。
●予防法
・長時間のデスクワーク、自動車・自転車・バイクの運転を避け、1~2時間で休憩をとり動くようにする。
・疲労をとり、ストレスを解放する。
・飲酒は控える。
・下半身を冷やさない(お風呂へ入ると症状が軽減することもある)。
●心配になること・・・
・Q.前立腺がん になることはあるのでしょうか?
A.心配する必要はないそうです。安心してください。
・Q.男性不妊になることはあるのでしょうか?・・・
A.精液のほとんどは前立腺や精嚢から出る分泌液で、これらは精子の快適な環境や活性化のための役割を担っています。炎症がある⇒分泌液成分変化⇒精子の運動率が低下することあり⇒男性不妊の一つの要因にはなる⇒しかし、精子自体の異常や、受精し妊娠した後の胎児には影響はないと言われていますので、安心してください。
慢性前立腺炎とは、このような病気です。
これを踏まえて次回は、「その2 一つの症例と改善経過」を書きたいと思います。