頭痛はどんなメカニズムで起きるか!?
~鍼灸で効果的な頭痛について~
頭痛・・・鍼灸で効果が期待できる、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛のメカニズムについて今回はお話します。
そのメカニズム・・・研究も進んでいるのですが確定したメカニズムはまだなく、しかし、最先端科学のおかげで多くのことが解明されてきたのも事実です。
ガンなどの疾病もそうですが、頭痛などの症状においても、その人の体質や置かれている環境や状況により原因は多くあることはご理解いただきたいと思います。
その原因を問診や身体観察で紐解きながら、その人の症状に対処していきます。私たち鍼灸マッサージ師は、その対処に鍼を使い、灸を使い、指や身体各所を使い、その病態の改善に尽力します。
緊張型頭痛
原因は、仕事などの姿勢からくる筋性ストレス、口・顎部の機能異常、心理社会的ストレス、不安、抑うつ、薬剤過剰刺激など多くあります。また、大・小後頭神経痛などの神経痛も緊張型頭痛に含まれます。
仕事をしたり、作業をす場合はどうしてもうつむき傾向になります。スマホなどを打つ時もそうかもしれません。その作業が長いほど負担が大きくなることは理解できると思います。
その際に、重いボーリングの球ほどもある頭部を支えるため、後頭部や後頸部の筋肉が強く収縮します。徐々に筋血流が減少し、阻血性(血液が足らない状態)筋収縮が起こり、その許容範囲を超えた時に後頭下に痛みが発症します。
頸部には交感神経節という交感神経(自律神経)の束があります。また、頸部の血流が足らなくなり筋緊張が高まると交感神経の緊張も高まり血管が収縮し、さらに血液の循環が悪くなり、頭部、頸部、肩や背中にまで影響が出て、コリをつくりやすい状態となります。
これは血管壁に対しても交感神経が枝を出しており、その緊張により血管性の浮腫や炎症を起こすためとも考えられます。
これは筋肉などの末梢ばかりではなく、硬膜周辺の血管にも影響を及ぼしているとも言われています。
緊張型頭痛は、筋肉・筋膜の緊張だけではなくて、中枢の要因など多くが関わり発症しているのかと考えられます。
片頭痛
この拍動性の頭痛は、実はメカニズムとしては群発頭痛も同じようなものではないかとも考えられています。
片頭痛は女性に多く、群発頭痛は発症頻度は少ないですが男性に多い。女性ホルモンが関係しているのか、そのあたりの性差などが関連しているかもしれないと言われていますが、両頭痛は発症メカニズムについては類似しています。
また頭部の痛みを感じる知覚は、頭頂部と顔面部が三叉神経、後頭部や後頸部は頸部から出る脊髄神経の2番、3番が関与します。
現在、メカニズムは以下のように考えられています。
1.何らかの刺激を受ける(脳の硬膜近傍の三叉神経終末)
大脳皮質拡延性抑制(CSD)という、神経細胞やその周りのグリア細胞も関与していると言われ、小さな損傷から起こる脳の波のように広がる反応です。この反応が片頭痛などの発症前に起こるというこり頭痛発症のきっかけとなると考えられています。
2.神経栄養因子(NGF)を介してTRPV1の機能が増強
TRPV1(トリップ・ブイワン)は、唐辛子の成分カプサイシンの辛さや痛さを感じるときに必要なイオンチャンネルのことです。細胞の表面にある開閉式の扉とでもイメージしていただければいいかなと思います。
この機能が増強し、CGRPやサブスタンスPという神経ぺプチドの分泌が増加します。これらは血管を拡張したり、炎症反応を高める物質です。
3.1-2により疼痛閾値(痛みを感じるライン)が低下
神経細胞が過敏となり、動脈上の痛覚センサーが刺激されやすくなります。神経原性炎症を起こし頭痛発症となります。
※脳の神経細胞というのは、生体恒常性維持という面では変化に即時対応するよう、たいへん敏感な反応を示します。身体の様々な機能を統御、制御する脳は人にとって最重要であるということです。もともと素早く反応する細胞、そこの一部がさらに過敏になるわけです。
4.脳幹の三叉神経核が刺激され続ける
上記1-3のような状況が長く続くと吻側延髄内側部、青斑核、視床下部A11、楔状核などから起こる「下降性疼痛抑制系」(=痛いの痛いの飛んで行け!という脳から末梢の痛みを抑えるためにあるシステム)が機能不全となります。
通常、痛みを感じない状態でも「痛み」と感じるような状態に脳や身体がなってしまいます(アロディニア)。
最近は、覚醒物質であるオレキシンが脳幹にある痛みに関連する神経核と密接に関わっているということが分かり、研究がされているようです。
※トリプタンという片頭痛や群発頭痛の発作初期に効果のある薬物は、上記の三叉神経終末で興奮性を抑制し、CGRPなど血管を拡張する物質の分泌を抑制することで、頭痛を抑える薬です。
群発頭痛
上記にも書きましたが、頻度は少なく男性に多い痛みです。発作時は、のたうちまわるほどの激痛があります(片頭痛はじっとしていたい)。これは、のたうちまわることで頭や体幹を激しく動かし、静脈血のうっ血や浮腫を改善することにより痛みを軽減しようという生体反応とも推測されています。
頭痛の発症メカニズムは片頭痛と同様に考えられていますが、群発頭痛では、三叉神経の過剰亢進(活性化)の状態が続くと、視床下部にある自律神経中枢が刺激されます。自律神経の一つである副交感神経も活性化され、大血管や涙腺等を刺激し、結膜充血、流涙、鼻汁、鼻閉などの随伴症状が現れると考えられています。
緊張型頭痛 片頭痛 群発頭痛に共通するもの
・急に発症するのではなく、様々な原因が重なり神経や血管の過敏な状況が持続され発症します(慢性頭痛)。
・卵が先かニワトリが先かかりませんが、身体の中での反応は必ず皮膚や筋膜など体表に現れてきます。
・先日、勉強させていただきました、慶応義塾大学 医学部附属病院 漢方医学センター(頭痛を主とする鍼灸外来)の鳥海 春樹先生の研究によると、体表に現れる筋肉・筋膜のコリが頭痛を増悪させる要因となり、なかなか薬でも治癒しない慢性頭痛を形成する。
・そのコリをとってあげると頭痛が軽減、消失するばかりか、視床下部にある自律神経中枢や睡眠中枢などの機能が改善され、「美味しく食べれる」「よく眠れる」という健康な状態に回復することができると考える。
※実際そのような訴えを患者から聞く。
このように考えると、体表面のコリをとり、脳神経に働きかけ、自律神経機能の調節をする・・・それが頭痛を軽減、消失することに繋がります。
この自律神経機能を整え、体表面に現れているコリをとるプロ、それは、鍼(はり)やお灸、指でツボ(経穴)を探り施術する私たち鍼灸マッサージ師が得意とするところであり、そのプロフェッショナルということになります。
上記のような頭痛でお困りの方は、一度、ご相談ご連絡ください。
鍼灸マッサージが不適応な頭痛に関しましては専門医をご紹介させていただきますので、安心してください。
-☆ 下記の記事もご参照ください ☆-
☆『頭痛は国民の多くが経験する症状~鍼灸に効果のある頭痛は!?』
☆『頭痛に鍼治療は有効なのか?!~症状改善と発作予防の立場から~』